経済学・経済政策の押さえるべき論点ガイド

経済は「選択」の学問。限られた資源で、どう最適に配分するかを考えます。

1. ミクロ経済学:個々の主体と市場のしくみ

  • 1.1 需要・供給と市場均衡
    • 需要は「安いほど買いたい」、供給は「高いほど作りたい」。2本の曲線が交わる価格と数量が均衡。
    • 価格弾力性は「価格が変わると、どのくらい量が動くか」。必需品は鈍感、贅沢品は敏感。
    • 余剰は取引から生まれる得。価格上限は品不足、価格下限は在庫の山になりやすい。
  • 1.2 消費者行動
    • 無差別曲線は「同じ満足の組み合わせ」。右上ほど満足が大きい。
    • 限界代替率は「どれだけ代わりに受け取れば満足が同じか」。
    • 価格変化の影響は、代替効果(安い方に乗り換える)と所得効果(実質的にお金が増減)に分けて考える。
  • 1.3 生産者行動
    • 生産関数は投入と産出の関係。規模の経済は「大きく作るほど平均コストが下がる」。
    • 短期は固定費が効き、長期は設備も調整可能。限界費用は「もう1単位作る追加コスト」。
    • 利潤最大化は「限界収入=限界費用」で判断。
  • 1.4 市場構造
    • 完全競争は多数の買い手売り手で価格は市場が決める。
    • 独占は1社の支配。価格差別は顧客ごとに価格を変えて利潤を最大化。
    • 寡占は少数の戦略的競争。数量で競う(クールノー)、価格で競う(ベルトラン)、先手後手(スタッケルベルグ)。
    • 独占的競争は差別化された多数企業。長期は超過利潤が消える。
  • 1.5 市場の失敗と政策
    • 外部性は「他人に波及する効果」。排ガスは悪い外部性で課税、研究は良い外部性で補助が有効。
    • 公共財は「競合せず排除しにくい」(灯台、公園)。無料乗り問題が起きやすい。
    • 情報の非対称性は、売り手と買い手の情報格差。保証や検査が解決策。
    • 競争政策は独占力の乱用を抑え、効率と消費者利益を守る。

2. マクロ経済学:経済全体の動き

  • 2.1 国民経済計算と主要指標
    • 名目GDPは現行価格、実質GDPは物価変動を除いた量。デフレーターは物価水準の指標。
    • 失業率やインフレ率で景気を把握。オークンの法則は「成長と失業の経験則」。フィリップス曲線は「インフレと失業の短期トレードオフ」。
  • 2.2 財市場・貨幣市場
    • ケインズ型モデルの乗数は「支出の連鎖拡大」。
    • 貨幣需要は取引と資産動機。中央銀行の供給でLM曲線が決まる。
    • IS-LMで財政政策と金融政策の効果を同時に読む。
  • 2.3 総需要・総供給(AD-AS)
    • ADは支出の合計、ASは生産能力。短期は価格・賃金の硬直で景気変動、長期は潜在成長に収れん。
  • 2.4 景気循環と成長
    • 需要ショック(消費・投資の急変)と供給ショック(原材料・生産性の変化)。
    • ソロー成長は資本蓄積と技術で長期成長を説明。内生的成長論は知識・R&Dの役割を強調。
  • 2.5 失業とインフレ
    • 自然失業率やNAIRUはインフレを加速させない失業率。
    • 予想インフレが賃金・価格に織り込まれ、政策効果を弱める。

3. 金融・財政政策:景気の舵取り

  • 3.1 財政政策
    • 税の帰着は「誰が本当に負担するか」。弾力性の大きい側ほど負担を逃れやすい。
    • 自動安定化は景気に合わせて税や給付が自動調整。債務は長期の持続可能性が要点。
  • 3.2 金融政策
    • 伝達メカニズムは、政策金利から市場金利、資産価格、為替、期待へと影響が波及。
    • ルール(テイラールール)と裁量の比較。予見可能性と柔軟性のバランス。
  • 3.3 政策ミックス
    • クラウディングアウトは財政拡張で金利上昇し民間投資が押し出される現象。
    • 流動性の罠やゼロ金利制約下では、量的緩和や財政との連携が重要。

4. 国際経済:開かれた経済の論理

  • 4.1 国際収支と為替
    • 経常収支はモノ・サービスと所得、金融収支は資本の出入り。
    • 為替は購買力平価(長期の物価差)や金利平価(利回り差)で説明。Jカーブは通貨安の貿易収支改善に時間差。
  • 4.2 開放経済のマクロ
    • マンデル・フレミングは「小国開放経済のIS-LM-BP」。資本移動と為替制度で政策効果が逆転。
    • 固定相場は為替安定の代わりに金融政策の自由度が小さい。変動相場は逆。
  • 4.3 貿易理論・通商政策
    • 比較優位は「得意分野に特化で全体のパイが拡大」。
    • 関税や割当は国内価格を押し上げ、消費者余剰を減らす。補助金は輸出を後押しするが財政負担。

5. 産業・競争・規制:ビジネスの戦略環境

  • 5.1 産業組織の基礎
    • 参入障壁は規模の経済、特許、ブランド、ネットワーク外部性など。
    • 二部料金(入場料+従量)、バンドリング(抱き合わせ)で利潤を高める手法。
  • 5.2 競争政策・規制改革
    • カルテル、抱き合わせ、排除型価格など反競争行為を監視。
    • 規制は安全や公平を守るが、過度だとイノベーションを阻害。最適な落とし所を探る。

6. 公共経済・社会的選択:みんなで決める難しさ

  • 6.1 公共選択と投票理論
    • 多数決は常に一貫するとは限らない(コンドルセのパラドックス)。
    • メディアン投票者定理は、中位の希望が政策を左右しやすいことを示す。
  • 6.2 政府の失敗
    • レントシーキングは利権獲得のための資源浪費。
    • 官僚制の非効率や情報不足も政策の歪みを生む。
  • 6.3 社会保障・再分配
    • 最適課税は「公平と効率の両立」を目指す考え方。
    • 年金や医療は世代間・世代内の再分配設計が鍵。

7. 経済統計・計量の基礎:数字の読み方

  • 7.1 指数と物価
    • ラスパイレス(基準年数量)、パーシェ(当年数量)、フィッシャー(幾何平均)。目的に応じて使い分け。
  • 7.2 相関・回帰の初歩
    • 相関は一緒に動く強さ、因果は原因と結果。相関があっても因果とは限らない。
    • 回帰は「他の要因を固定して関係を見る」道具。
  • 7.3 期待値・分散
    • 期待値は平均的な結果、分散はブレの大きさ。
    • リスク回避的な選好では、同じ期待値なら分散の小さい方を選ぶ。

8. 現代トピック:今と直結する論点

  • 8.1 少子高齢化・生産性
    • 労働供給の減少は潜在成長率に影響。生産性向上と労働参加拡大が鍵。
  • 8.2 デジタル化・プラットフォーム経済
    • ネットワーク外部性と規模の経済が勝者総取りを生みやすい。データと規制の設計が重要。
  • 8.3 為替介入・物価安定目標
    • 介入は急激な変動を抑える手段。インフレ目標は期待を安定させるアンカー。
  • 8.4 脱炭素と外部性内部化
    • カーボンプライシングは温室効果ガスの社会的コストを価格に反映。技術革新とセットで進める。

学びを定着させる3つのコツ

  • 図を描く:需要・供給、IS-LM、AD-ASはまず手で描いて直感化。
  • 事例に当てはめる:身近な価格改定や補助金ニュースで余剰や弾力性を考える。
  • 言葉で要約:各章を「3行で説明」できるまで圧縮する。

この構成で、解説をさらに厚くした連載形式や、過去問リンク集への接続もできます。必要なら各節を図解付きで拡張します。

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