
中小企業診断士の試験科目「中小企業経営・中小企業政策」は、大きく「中小企業経営(白書)」と「中小企業政策(施策)」の2つの分野に分かれています。
全体像を掴むために、各分野の論点を整理します。
【1. 中小企業経営(中小企業白書・小規模企業白書)】
こちらは、最新の「中小企業白書」「小規模企業白書」に基づき、日本の中小企業の「今」をデータや動向から把握する分野です。
■ 中小企業の定義と現状
・中小企業の定義: まず基本として、「中小企業基本法」で定められている業種ごとの資本金や従業員数の定義を覚えます。
・小規模企業の定義: 同様に、小規模企業の定義も重要です。
・日本経済における位置づけ: 企業数や従業員数、付加価値額などで、中小企業が日本経済でどれほどの割合を占めているかを理解します。
■ 中小企業の動向(マクロ分析)
・企業の動向: 開業率や廃業率の推移、企業のライフサイクル(創業・成長・承継・再生)の状況を見ます。
・業況・経営課題: 景況感(DI)、売上高、経常利益の動向、そして「人手不足」「後継者難」「原材料価格の高騰」といった経営課題を把握します。
■ 白書の時事テーマ
・その年の重点トピック: 白書はその年ごとに重点テーマ(例:DXの推進、GX(グリーントランスフォーメーション)、事業承継、価格転嫁、人手不足と生産性向上など)を設けています。この時事的な論点が問われます。
【2. 中小企業政策(中小企業施策)】
こちらは、国や自治体が行っている中小企業を支援するための「具体的な施策(ルールや支援策)」を学ぶ分野です。
■ 政策の基本(法律)
・中小企業基本法: 中小企業政策の「憲法」とも言える法律です。その「基本理念」や「国・自治体の責務」が問われます。
・その他関連法規: 「下請代金支払遅延等防止法(下請法)」など、中小企業を守るための基本的な法律の概要も含まれます。
■ 金融支援(カネ)
・資金調達の円滑化: 中小企業がお金を借りやすくするための施策です。
・信用保証協会: 公的な保証人となってくれる「信用保証制度」。
・政府系金融機関: 「日本政策金融公庫」による融資制度。
・その他: 信用補完制度、補助金・助成金(例:ものづくり補助金、事業再構築補助金など)の概要。
■ 経営支援(ヒト・モノ・ノウハウ)
・経営基盤の強化: 経営力・技術力を高めるための支援です。
・経営革新: 新しい取り組み(新商品開発、新サービス展開など)を支援する制度。
・経営力向上計画: 税制優遇や金融支援が受けられる計画認定制度。
・支援体制:
・支援機関: 「よろず支援拠点」や「商工会・商工会議所」、「中小企業基盤整備機構(中小機構)」といった相談先・支援機関の役割。
・専門家活用: 中小企業診断士を含む専門家派遣の制度。
■ 組織・再生・承継
・事業承継: 後継者不足に対応するための支援(例:事業承継・引継ぎ支援センター、税制優遇)。
・M&A(事業引継ぎ): 会社や事業を他者に譲渡する際の支援。
・事業再生・倒産: 経営が苦しくなった時の再生支援(例:中小企業再生支援協議会)や、関連する法律(民事再生法など)の基礎知識。
■ その他(連携・海外展開など)
・連携・下請取引: 中小企業同士の連携(組合など)や、大企業との適切な取引(下請振興法など)に関する施策。
・創業支援: 新しく事業を始める人を支援する施策。
・海外展開支援: 中小企業の輸出や海外進出をサポートする施策。
【学習のポイント】
・「経営(白書)」は、最新の白書の「グラフや統計データ」と、そこから読み取れる「傾向・課題」を掴むことが中心です。
・「政策(施策)」は、数が多いため、「(1)誰が、(2)何のために、(3)どんな支援(対象者、支援内容)をするのか」をセットで整理して暗記することが中心となります。


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